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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』阪神編 > 達龍〈たつりゅう〉(川西市)

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更新日:2012年10月22日

達龍〈たつりゅう〉(川西市)

むかし、阪鶴鉄道〈はんかくてつどう〉(福知山〈ふくちやま〉線)池田駅〈いけだえき〉には人力車〈じんりきしゃ〉のたまり場があって、それがこのあたりの交通をたいへん便利〈べんり〉にしていました。
駅のまわりには、きゅうけい所やおかし屋、くだもの屋、うどん屋、みやげもの屋などがのきをならべ、たいそうにぎやかでありました。

あの春のころ、まだ麦のせたけがそう長くのびていなかったのに、とてもむし暑〈あつ〉い日がやってきました。
「へんなむし暑さやなあ。」
「まだ春やというのに。」
と、道をとおる人びとは話していました。
昼〈ひる〉すぎのことです。空をおおっていた雲がだんだん黒くなり、やがて、ザーザーと大雨がふってきました。しかも、その雨が黒ずんでいます。この季節〈きせつ〉はずれの大雨に、だれもかれもおどろきました。
「きょうは、どないなってんのや。」
「くるうとるやないか。」
といいあっていました。
この時であります。池田駅の人力車のたまり場にいた車夫〈しゃふ〉たちが、いっせいに目をみはりました。
たまり場から西南の方、加茂〈かも〉の高台のやぶ「六兵衛〈ろくひょうえ〉大やぶ」に、うずをまいた大黒雲がおりてきたかと思うと、たちまち天にまい上がって、大雨は晴れ上がってしまったのです。
さあ、たいへん。大やぶに何かおこったのにちがいないと、人びとは、ぞろぞろとやぶを見に行きました。
大やぶは、上加茂篠木六兵衛〈かみかもしのきろくひょうえ〉の持ちやぶで、東、西、南の三面ががけでかこまれた細長いくぼ地で、やぶの中央は一だんとひくくなっています。そこからは清水〈しみず〉がこんこんとわき、それが北の方に流れて最明寺〈さいめょうじ〉川にそそいでいます。
大やぶは昼でも暗く、だれもが気味の悪いやぶといっていました。
行ってみると、やぶの中ほどのひくいところは、竹がむちゃくちゃに倒〈たお〉れかかっています。倒れかかった竹のくきには、点々〈てんてん〉とうす黒いはん点が見られます。
このやぶの主〈ぬし〉となっている蛇〈じゃ〉が龍〈りゅう〉となって黒雲にのって天にのぼり、その時足場〈あしば〉となった竹に龍のつめあとが残ったというのであります。
六兵衛の南どなりに住んでいる祈〈き〉とう師〈し〉の佐々木立軒〈ささきりっけん〉も、これを見に来ておどろきました。
そして、その人の話を聞いて、人びとはさらにびっくりしました。
「大雨の前の晩、六兵衛大やぶの大蛇〈だいじゃ〉がまくら元にあらわれてな。長らく大やぶでおせわになりました。おかげで無事〈ぶじ〉に天に上がることができます、と礼をいいにあらわれたのや。夢〈ゆめ〉かと思ったが、ほんまやったな。」
「やっぱり、どうもおかしな天気やと思った。」
「あの黒い雲は、ふつうやないわ。」
「礼をいうとは、感心なやつや。」
などと、人びとは口々に話したというのであります。
うわさは、どんどんひろがり
「ここに来ておがむと、どんな病気でもなおるそうや。」
「雨の日に来ると、家がさかえるようや。」
人びとは、朝となく夜となく見にきたということです。

いつの間にやら竹の倒れたところには、小さな神社がたてられ、花や線香〈せんこう〉がそなえられるようになりました。赤くぬった鳥居〈とりい〉が日ましにたてられ、道もひらかれました。
この神社にあげられたおさいせんは、大やぶの持主の篠木家〈しのきけ〉にとどけられましたが、篠木家では、このおさいせんで石とうろうを一対〈いっつい〉こしらえ、高さ四尺〈しゃく〉(一メートル三十センチ)の角石に「達龍〈たつりゅう〉」ときざんで鴨〈かも〉神社(加茂神社)に奉納〈ほうのう〉したということであります。

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