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更新日:2012年7月10日

座頭谷のいわれ(西宮市)

西宮市の生瀬〈なまぜ〉から船坂〈ふなさか〉へ通じる七曲〈ななまが〉りといわれる山道から、太多田〈おおただ〉川をへだてたむこうがわに、ほうらい峡〈きょう〉という名所があります。かこう岩が風化されて、ちょうど、かけじくの山水画にみられるようなけわしい山形になっていて、朝日、夕日に照らされる姿は、思わず見とれさすものがあります。谷
けれども、この美しい裏六甲の谷には、あわれな座頭〈ざとう〉のものがたりが、今もつたえられています

座頭というのは、ビワなどをひきながら歌をうたってくらしをたてている目のみえない人のことです。

京都に住んでいたひとりの座頭が、持病〈じびょう〉(完全になおしにくいので、たびたび苦しめられる病気)をなおしたいため有馬〈ありま〉の温泉〈おんせん〉に行こうと思いました。まわりの人は、目の見えない人のひとり旅を心配して、やめさせようとしましたが、かれはふりきって旅立ってしまいました。
温泉町その日は、はたご(今の旅館)で一夜をあかし、翌日の昼ごろには、もう生瀬につきました。そこから有馬までは、武庫川の支流、太多田川にそったけわしい有馬街道〈ありまかいどう〉です。座頭は、まだ日も高いので、杖〈つえ〉をたよりにゆうゆうと山道をたどっていきました。ところが、どうしたことか左手の谷に迷いこんでしまったのです。あちら、こちらと方向を変えて歩いてみましたが、すぐ絶壁〈ぜっぺき〉にぶつかってすすめなくなります。そのうち、旅人でも通りかかるだろうとかたわらの石に腰をおろして待ってはみましたが、一向〈いっこう〉にそのけはいもなく、谷川の音とサルの鳴き声がきこえるばかりです。秋の日は、やがて山かげに近づきかけたとみえて、ひんやりした風が吹いてきました。時間からいえばもう有馬についてもよいころです。座頭は、このままじっとしていてもしかたがないと杖〈つえ〉をたよりに、ふたたび歩きはじめました。がやっぱりだ夜めでした。どちらへ向かってもすぐ絶壁につきあたってしまいます。とうとう夕日も沈み、あたりは暗くなってきました。不安にたえかねた座頭は、大声で助けをもとめましたが、声は、いたずらに谷間にこだまするだけです。とっぷりと暮れた山中は、急に冷えてきます。ただでさえ持病もちの座頭です。飢〈う〉えと寒さに持病が急に痛み出しました。今は、動く気力もうしなってバッタリ倒れてしまいました。そして、いつしか痛みも忘れ、見送ってくれた近所の人びとや有馬の湯にゆったりとつかっている自分の姿を夢見ていました。
二、三日して、土地の猟人〈かりうど〉が、石をまくらにした座頭の遺体〈いたい〉をみつけました。
そののち、地元の人たちは、だれいうとなくこの谷を“座頭谷”と呼ぶようになりました。

 

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