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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』淡路編 > 孫太郎のちょんぼ(洲本市安乎町)

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更新日:2012年7月23日

孫太郎のちょんぼ(洲本市安乎町)

洲本市安乎〈あいが〉町に、むかし孫太郎という人がいた。
なまけ者で、遊んでばかりいたものだから、とうとうひどく貧乏して、その日の暮らしにもことかくようになった。そこで、尾崎〈おざき〉村のちょんぼという女の人からお米を三石〈ごく〉(約、三人が一年間に食べる量)借りましたが、もともと返すあてなどはありませんでした。
返す期限が過ぎてからというものは、矢のようなさいそく。たまりかねて、孫太郎が、尾崎村のちょんぼの所へ出かけて、いくらことわっても、だめなものはだめ。初め、仲の良かったちょんぼも、冷たく孫太郎をはねつけるばかり。最後には、孫太郎を訴えるとおどかした。
ひとり、暗い山道をとぼとぼと帰りながら、孫太郎は悪い考えをおこした。「ちょんぼさえいなけりゃ、借りた米なんか、返さなくてもいいんじゃないか。もっと早く思いつけばよかった…。」
その夜のやみにまぎれて、孫太郎は役所へ忍びこんだ。当時は、見つかっただけでも大変なことである。孫太郎の目あては米倉〈こめぐら〉。こっそり近づいて、番人のすきを盗んで、米倉の壁に穴をあけて帰ってきた。
翌日、役所の米倉が破られたというので、役人たちは大〈おお〉そうどう。あちらへ走り、こちらへ馬をとばして、犯人さがしにやっきとなった。それを見すまして孫太郎、何くわぬ顔して役所へ行き、「おそれながら」と申し出た。
「よんべ(昨夜)、わしがこの前を通りかかったら、ここの米倉から米を盗んで逃げていくやつを見かけました。あれは、たしかに尾崎村の、ちょんぼという女〈おなご〉じゃと思います、はい。」
「そうか、よう言うてくれた。後で恩賞〈おんしょう〉をつかわすぞ。」
すぐに、役人が馬をとばし、ちょんぼが捕えられてきた。ちょんぼは、泣き伏して、自分に罪のないことを申したてた。
「お役人さま、なんでこのかよわい女手で、あの厚い白壁〈しらかべ〉の倉が破れましょうか、お願いでございます。もう一度、破られたという穴を、お調べになってください。」
念のためと、役人が調べ直してみると、その穴は、人が通り抜けられるほど、大きくはなかった。
「これはおかしい、もう一度孫太郎を呼べ。」
ついに、孫太郎の計略〈けいりゃく〉がばれてしまい、かわいそうに孫太郎ははりつけ、子供の次郎吉は討首〈うちくび〉となり、五人の倉の番人は追放されてしまいました。
孫太郎がはりつけになった場所は、砦場〈はりば〉といって、その後しばらくは、土地の名として残っていました。また、おろかな心を起したばかりに、子供まで道連れにした孫太郎のことが歌となり、
「安乎〈あいが〉孫太郎、筆のあやまりよ、ちょんぼ心から」
と、女の人や子供たちに歌われたと、昔の本にありますが、その歌の意味は、今では、はっきりとはわかりません。

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