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更新日:2012年6月20日
むかし昔、あるところに小さなこんもりとしげった森があった。
お城のあったところから東北に四丁(約四四〇メートル)ほどいったところで、荒神〈こうじん〉さんをおまつりしてある林の中に、五、六才の男の子と女の子が二人相むつまじく何かを話していた。
たまたま通りかかった大人が、「おめえら兄さんと妹の仲かえ。」とたずねてみると、「わしらは、仲のええ、友だちじゃ。」ということである。
昔は、「男女、幼くして席を同じゅうせず」と言われていただけに、他〈た〉の子どもを交えず遊ぶことはきんじられていたのでめずらしかった。しかし、この二人はいつもいつも、この森にきてはたのしそうに遊ぶようすをみて、双方〈そうほう〉の両親はとてもよろこび、「おめえら夫婦になったらどうじゃ。」とすすめた。
二人はそれからもこの森にきて、たのしげに語りあっていたという。
それ以来、この森を「恋の森」とよぶようになった。
しる人ある、恋の森なる雫〈しずく〉にはよそなる人の袖〈そで〉もぬれたり
とうたわれるようになり、同地に鯉森〈こいもり〉という姓〈せい〉は、ここからつけられたと言われている。
この森の小さな荒神さんは夫婦円満の神さまだと言われ、夫婦仲の悪いときは、この荒神さんの前で相むつまじく話しあえば、もとの恋仲時代の円満な夫婦にもどると言われている。
土地の人はもちろん、遠くこの地をたずねてお参りする姿も見られる。
この藪〈やぶ〉に小さな井戸があり、ここからわき出る水を恋の清水とも呼び、新婚早々、この荒神へお参りすれば、末長く幸せであると言い伝えられている。
緑町広田に伝わる民話の一つとして、古くから知られている。
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