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更新日:2012年6月20日
むかし、関左次兵衛〈せきさじへえ〉と妻との間に、かわいい女の子がいました。その夫婦は、大変その子をかわいがっていました。ところが、その女の子が、急に病気で死んでしまいました。
「あの子だけが、生きがいだったのに。」
「どうして死んでしもたんやろ。」
関夫婦の悲しみは、たとえようもなく、毎日、泣き暮らしていました。
ある日、たそがれ時に、妻が縁側へ出てみると、庭でなにやら動くものがあります。よくみると、女の子が赤い手ぬぐいをかぶって、うたいながら、踊っているのです。
妻は、その子の顔をみてびっくりしました。それは、死んだはずのわが娘なのです。
急いで夫の左次兵衛に告げますと、左次兵衛もとんできて、「あっ!わが娘だ。」と叫びました。
「しかし…待てよ…。あの女の子は、顔かたちは、わが娘とそっくりだがどこかちがうぞ…。ありゃわが娘でないわい。」そう言って弓矢を持ってきました。
「やめてください。あれは、まちがいなくわが娘です。殺さないで…。」
妻は必死に止めようとしましたが、夫は、「ちがう、ちがう、死んだ娘が生きかえるはずはない。何かが化けているのだ。」そういって、夫は、妻の止めるのも聞かず、弓に矢をつがえ、踊っている女の子を射ました。
手ごたえがあったのか、「きゃん。」と鳴いて姿を消してしまいました。
「団次〈だんじ〉!団次!」
家来の団次をよんだ左次兵衛は、「庭から外へ、あれ、あのように血の跡がついている。あの血の跡を追ってみい。」と命じました。
団次が提灯〈ちょうちん〉をかざして血の跡を追っていきますと、堀端をとおって姥が淵〈うばがふち〉というところまで、点々と血の跡がついていました。姥が淵に穴があいていて、団次がその穴をのぞいてみますと、「あっ!たぬきだ。古だぬきだ。」思わず団次は叫びました。
古だぬきが、その胸に矢をさされて死んでいたのです。
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