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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』淡路編 > 尾崎〈おざき〉の枯木神社〈かれきさん〉(一宮町尾崎)

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更新日:2012年11月12日

尾崎〈おざき〉の枯木神社〈かれきさん〉(一宮町尾崎)

むかしむかし、一宮町の尾崎の海岸に、大きな枯れ木が流れついた。
それを見つけた村人たち、
「ごつい木やなあ、どこから流れてきたんやろ。」
「皮がむけてしもとるから、長いこと海で泳いどったんやろ。」
「何の木かなあ、こんな赤黒い色した木は見たことないのう。」
と言いながら、たきぎにしようというので引きあげにかかった。ところが、その木にさわった者たちは、たちまち体のあちこちが痛みだした。
「うわあっ、いたい、いたい。」
「こりゃこたえん、助けてくれえっ。」
みんな、海岸のごつごつした岩の上で、体のあちこちを押えて、ころげまわった。
「こりゃ、おそろしい木じゃ。たたりがあるわ。」
「きしょくの悪い(気持ちの悪い)木じゃと思とったが、こんなにむごいとは知らなんだ。」
「こんな木に、長いことおられたらこたえん。はよ、よそへ流せ。」
そこでおそるおそる、沖の方へ突き出した。突き出された木は、潮に流されて隣村の海岸へ流れついた。

何も知らん隣の村でも同じこと。たきぎにでもしようかい、というわけで、引きあげにかかったところが、みんな体中が痛みだした。手足がしびれるわ、腰が抜けるわ、目がくらむわ。
「こないな、きしょくの悪い木、はよう、よそへ流せ。」
というわけで、又押し出されて、もとの尾崎の海岸へ流れついた。
「うわあ、またきよったわ。くわばら、くわばら。」
「いっそ、遠いところへ持っていけや。」
今度は、元気な若者たちが、舟で引っ張って、岩屋の沖まで運んで行って、そこで放り出した。放り出された枯木は、潮の流れのまにまに、浦から仮屋、佐野の沖を通って、志筑〈しずき〉の海岸へ流れついた。志筑の人々も、
「ごつい木やなあ、どこから流れてきたんやろ。」
「何の木かなあ、こんな赤黒い色した木は見たことないのう。」
そう言いながら、ひとかかえもありそうな枯木を引きあげにかかったが、さあ大変。
「うわあっ、痛い、痛い。」
「こりゃこたえん、助けてくれえっ。」
と海岸の砂の上をころげまわった。
大〈おお〉そうどうしているところへ、物知りじいさんがやってきた。
「この木はなあ、むかし静御前〈しずかごぜん〉様が、淡路へ来なさったとき、持ってきて植えなさった霊木〈れいぼく〉(魂〈たましい〉のある木)で、長いこと立っとったんじゃが、台風ででも流されたんじゃろ。お前ら、大事にせんかい、ばちがあたったんじゃ。はよう、お供〈そな〉え持ってこい。」
と、みんなに言ったが、まだ手足のしびれも直らぬ連中は腹を立てて、
「静御前もへちまもあるかい。」
「こないな、きしょくの悪い木、はよう、よそへ流せ。」
というわけで、また舟で引っ張って岩屋の沖へもっていった。
尾崎村の人たちは、まさかもう来〈く〉まいと思って、それでも海岸へつき出た岩鼻の上で、見張りを出していた。ところが、あのぶきみな、赤黒い色をした枯木が、また沖にあらわれて、まるで生きもののように、ゆらりゆらりと寄ってくるのを見ると、みんなは、へなへなとその場にへたばってしまいました。
やがて、志筑の方からも、静御前の話が伝わり、村人たちはその枯木を、海岸の岩鼻の上に、明神〈みょうじん〉さんとして、ていねいにまつりました。それからの長い間、その木は枯れたまま倒れもしないで、ずっと海岸に立ちつづけていました。沖を通る船など、波の荒い日には、海上から、その枯れ木にお祈りをし、難をのがれることもたびたびでした。

現在、この木は、尾崎の枯木部落にある枯木神社のご神体として祭られています。土地の人々の話によると、白布〈はくふ〉で包んだご神体は、何百年たった今でも、つやつやとしており、その布を巻きかえるときに、手でさわった人が、後でかげんが悪くなった、などという話も聞かれます。

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