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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』淡路編 > 白巣城竹の皮合戦(五色町鮎原)

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更新日:2012年6月1日

白巣城竹の皮合戦(五色町鮎原)

「おい竹の皮はいったい何枚あつまった。」
「おう、これで五十枚だ。して貴公〈きこう〉は。」
「まだ四十枚だ。それにしても城主、冬秀公〈ふゆひでこう〉は竹の皮をあつめてどうされるおつもりだろうか。」
「生きるか死ぬかの大合戦だ。十分考えられてのことだろうが、どうも分からぬわい。」
「それにしても淡路の国の城は、ほとんど秀吉にやられこうさんしてしまっている。」
「でもこの白巣城だけは大丈夫だ。まわりはきついがけっぱなでのぼれないからのう。」
「ほんとうだ。さあもう一息、しっかりあつめよう。」

天正九年(今から約四百年前)白巣城は秀吉に完全にとりかこまれて一か月以上もたっていた時のこと。
安宅九郎衛門冬秀〈あたぎくろうえもんふゆひで〉はそれでもなお降参しなかった。
秀吉も城に向かって総こうげきを開始しようというけはいを見せていた。城の運命もここ数日にかかっていたのであった。
ところでその日、本丸いっぱいに山とつまれた竹の皮を前にして冬秀は、全家来に命令をした。

「みんなにあつめてもらった、この竹の皮を夜の間に、この城にのぼれる道という道全部へぎっしりとしけ。そうすれば夜間攻めのぼる秀吉は、この竹の皮に足をすべらせてあわてふためくぞ。そこを一挙に攻めおりるのじゃ。わかったか。」
「ハイッ、しょうちいたしました。」
「さてこそ名あん。さすがは殿様、ちえ者でござる。」
せっぱつまった今、冬秀公のこの見事な考えに一同の者は感心しながら、さっそく道という道に竹の皮をしきつめたのであった。そうして城の中にある刀ややり、だんやくを全部あつめて待ちかまえた。
原子ばくだんでドカンという今の時代の戦争にくらべて、とても想像もできないような戦いが始まろうとしているのであった。

一方、秀吉勢、竹の皮をしきつめてあろうとはつゆ知らず夜にまぎれて一挙に城をのっとろうとした。
「小城とてあなどるな。」
「心してのぼれよ。冬秀のちえ者、何をたくらんでいるかも知れんぞ。」
やがて登りかけた先頭で、ワアッと叫び声があがりごうごうと人がころがり落ちてきた。

何が何だか分からぬうちに秀吉勢は総くずれである。歯ぎしりをした秀吉は一体どうしたのだ、何事ならんと調べてみると山道一体にぎっしりと竹の皮がしきつめられていたのである。
「さては冬秀め、やりおったな。よしそれならばこちらにも考えがあるぞ。」しばらく考えていた秀吉は、「ふたたび総こうげき開始。ただし一番先に行く者はたいまつを持てッ。そして竹の皮にたどりつき火をつけるのだ。竹の皮に火をはなて。」ふたたびおこるときの声…。陣だいこと共に総こうげきが始まった。やがて竹の皮に火がついたと見えあたりが明るくなってきた。油のしみている竹の皮は、おりからの風にあおられてもえあがっていく。まるで石油に火をつけたように、あれよあれよというまもなく道を走って山の上の本丸まで火は一直線にもえ上がっていった。

そうだとは知らず冬秀は自分の作戦に気をよくしてねどこにはいっていた。しばらくして家来が、「大へんです。竹の皮に火をつけられました。山はまるやけでお城もこれまでです。」という知らせを聞いた冬秀は、とこをけってはね起きた。
「何、ぜんめつゥ。」本丸から見おろした十あまりの道は火の海であった。今はこれまでと覚悟をした冬秀であったが、かわいい姫だけはどうかして助けたいと思った。
「姫を早く起こし、うばと共に庭の井戸の中にあるひみつのへやへかくしてやってくれ。」
井戸の底にあるへやに入った姫を見とどけ、冬秀は城と共に焼けていった。


やがて、焼野が原になった城あとに登ってきた秀吉勢は、「全部やけてしまい、ねこの子一ぴきもおらぬわい。…おや…?」その時、どこでどうしていたのか、一ぴきの犬が走り出て来た。
「おかしいことだ。井戸の中に向かってなくとは、これはふしぎだ。それ、井戸の中をくまなく調べよ。何かあるぞ。」やはりぬけ穴があったのだ。中は六じょうじきぐらいのへやがあり、中で姫とうばがふるえていた。世はまさに戦国時代―かわいい姫とてようしゃはしない、すぐ引き出され首がはねられた。

それから四百年…今もま夜中になると…砂で埋まっている井中の中から、姫のかなしいなき声が聞えてくる。倉あとにはまっ黒にやけた米や麦が今もたくさん残っている。それを持ち帰った人はなん病にとりつかれるというので、誰も持ち帰る人がいない。城主の白骨と共にさびしく山上に人のおとずれを待っている。

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