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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』淡路編 > 別当〈べっとう〉の潮(淡路町岩屋)

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更新日:2012年6月20日

別当の潮(淡路町岩屋)

むかし、潮の流れが速い明石海峡を前にみる、淡路島の北端に近い岩屋の浜辺でのことです。近くの観音寺の別当坊さんに飼われている一匹の犬がおりました。毎日毎日、海の潮の流れをみていると、早いときもあり、遅いときもあることに気づきました。特に早いのは、月に一度ありました。
「あの潮は、泉州(今の堺市)の方へ行くらしい。一つあの潮にのって、泉州というちがった国へいってみよう。」
犬は、そんなことを考えて、浜辺にうちあげられた木ぎれをくわえて、ジャブジャブと海へ入っていって、潮の流れに、ほうりこみました。そして、丘へいそいでかけあがってその木ぎれをみつめ、また、かけおりました。何度も何度もくり返しながら…。
「あの犬、さっきから何しよるんやろ。」「別当坊さんの犬は、かしこい犬やのに、どないしたんやろ。」漁師たちは、不思議そうに、話し合っていました。
「それじゃあ、木ぎれに乗って、冒険してやろう、ワンワン。」ついに犬は、木ぎれをくわえながら、流れの早い潮の中へとびこみました。
「ありゃ!あほなことをしよる。」「こんな潮の流れが、速いのに。」「えらいこっちゃ。」「助けたろ。」漁師たちは、口ぐちに叫びながら、犬を追いかけました。でも、犬は、すでに、潮にのって、どんどん流れていきます。

「これでよし、このぐらい速いと、泉州へ着くのは、すぐだぞ。」犬は、内心、ほくそ笑み〈えみ〉ました。漁師たちの方は、犬がそんなことを考えているとは知らず、「もう、あかん。」「いってしもた。」「かわいそうに。」「ええ犬やったのに。」わいわいいいながらも、犬のめい福を祈りました。

ところが、それから数日たって、綱吉〈つなきち〉という村の漁師が、商売で堺〈さかい〉の町へ行っておりました。
むこうの街角から、どこかでみたことのある犬がやってきて、うれしそうに尻尾〈しっぽ〉をふるのです。
「あれ!別当坊さんの犬やないか。よう生きとったなあ。」犬は、「あの潮にのったらすぐやがな。」そんなことを考え、クンクン鼻をならしながら、綱吉についていきました。綱吉が犬をつれて岩屋へ帰ってくると、村の人々は、びっくりしました。

「ありゃ!この犬生きとったんか。」「あの速い潮にのって堺へいったんやろか。」「よう、泳げたなあ。」村中の人々が集まって、別当坊さんの犬のうわさでもちきりでした。
犬は考えました。
「わしの方が、人間さまよりかしこいわい。」
村の長老がいいました。
「こりゃ、えらい犬じゃ、月の十五・六日のころ、速い潮の流れにのれば、堺の町へ、早く行けるんとちがうか。明石、兵庫、大阪とまわるより、はよ行けるわい。若い衆、ひとつ、ためしに、船を出してみたら、どないやろかな。」若い漁師たちは、長老のことばに従って、船でためすことにしました。潮にのって船は、カイもロも、いらず、らくらくと泉州の堺に着くことが出来ました。

こうして、かしこい犬によって、岩屋から、堺までの新しい航路が開かれました。その潮も犬にちなんで、「別当の潮」と呼ぶようになったのです。

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