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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』淡路編 > 切らずのバベ(洲本市由良町)

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更新日:2012年6月20日

切らずのバベ(洲本市由良町)

洲本市由良町には、昭和二十年に日本が戦争に敗けるまで、由良要塞〈ようさい〉(軍隊の大きな陣地)があり、いくつもの大砲が、紀淡海峡に向かってすえられていました。

この要塞が完成したのは、明治二十九年のことですが、何しろ大工事でしたから、附近の人々は、大ぜいかり出されて、木を伐り〈きり〉、山をひらき、新らしい道をつけるなどしました。


由良の町の向かいに、わずかの海をへだてて、細長い成が島〈なるがしま〉があります。そこの小高い山が成山〈なるやま〉と呼ばれ、そこに昔のお城の跡があります。その成山城の跡から、少し山の方へ上ったあたりに、大きなバベの木が立っていました。バベの木にしては、珍らしい位、大きな木でした。

要塞の工事のため、そのバベの木も切り倒すよう命令が出ました。何人かの木びき〈こびき〉(木を切る職人)を呼んで切りはじめました。ぎーこ、ぎーこ、鼻うたまじりで木を切りはじめました。
「おい、えらいこっちや、木から血が出とら。」一人の木びきが飛び上って言いました。「ほんな、あほな。」と言いながら、みんな仕事を止めて見てみると、根元の切り口からまっ赤な血が、どくどくとふき出していました。

「これは神様の木やで。こんなもん伐っとったら、たたりで死んでしまうわ。」すぐに、このことを隊長さんから、要塞の司令官に報告しました。司令官も驚いて、ただちに伐ることの中止を命令しました。そして御神酒〈おみき〉を供え、しめ縄をかけて、それ以後は、神木〈しんぼく〉としてていねいに敬っておりました。

いつの頃だったか、要塞にいた一人の兵隊さんが、きゅうけいの時に、ご神木のバベの木の側の丸太に腰をおろしていっぷくしていた。ところが、何やらお尻の下がごそごそするので、立ち上ってよく見ると、それは丸太ではなくて、大きな蛇でした。その兵隊さんは、まもなく死んでしまいました。

バベの木のご神体が蛇だったのです。それからは、土地の人々は、ご神体の蛇のことを「長い人」と呼んで敬い、このバベの木を、「切らずのバベ」として、どんな小枝も切ってはならないと言い伝えています。
それからしばらく後のこと。バベの木に、誰もさわらないものだから、つたやかずらが木にいっぱい巻きついていました。土地の人が、あれでは神様もかわいそうだと思い、土足のまま木にのぼり、つたを切りはらってやりました。切り終って、その人が下に降りたとたんに、ふらふらっとしてしまって、とうとうその日は、どうしても、すぐ近くにある自分の家へ帰れずに、一晩そこで寝こんでしまったということです。

『由良町 宮谷くにゑ氏 談』

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