ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』淡路編 > 安乎の海坊主(安乎町)
ここから本文です。
更新日:2012年6月20日
むかし、安乎〈あいが〉(洲本市安乎町〈あいがちょう〉)の海辺に、世にも不思議な動物が時々あらわれて人々を驚かせた。
「海坊主、わし、昨日の夕方見たでえ。」
「海坊主いうて、どんなんや。」
「頭は猿みたいで、ネズミ色しとってなあ。」
「ふうん、ふうん。」
「眼は、まるうてなあ、口がとがっとって…」
「…」
「喉〈のど〉の下は茶色かったでえ。」
「へーえ。」
海坊主の話は、安乎の村だけでなく、近くの村にも、うわさが広がっていった。
「あの海坊主、海の中へもぐって魚を取ってって、くわえてかみもって…」
「そやそや、浮きあがってきて食べよったなあ。」
「そやけど、海坊主が食べるんは、海の底におるヒラメやカレしか食べへんなあ。」
「泳いどる魚食べよんの見たことないなあ。」
「海面に少し肩をつき出して、手みたいなひれが見えたでえ。」
「ほんまや、頭は、けだものみたいで、尾ひれは海老みたいやったなあ。」
「そんでも、全身みた者ないんちがうか。」
「不思議〈ふしぎ〉な生きものやなあ。」
こうして、見物人が方々から集まってきて、ワイワイ騒いでいた。
その海坊主は、何ものともわからないままに、いっしか、どこかへいってしまった。
お問い合わせ