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更新日:2012年12月10日

美女池(南淡町北阿万)

昔、北阿万稲田南村の谷あいに、二つの池がありました、一つは上の池、もう一つは下の池といわれていました。
阿万の潮崎というところに大蛇が住んでいて、この山里に通いこの池で暮したようです。

或夏の朝早く、お百姓さんが山へお盆の樒〈しきみ〉をとりに出て、この池のほとりにさしかかりますと、山あいから池の面にかけて、白く霧がたちこめ、絵にかいたような美しい朝景色です。お百姓さんがしばしこの美しさに見とれていますと、水の中からすうっとそれはそれは美しい娘さんがあらわれました。これは、これはとお百姓さんは、こぶしで目をこすってみましたが、見まちがいではありません。きれいな着物をきた、とっても美しい娘さんです。池の中から美女がと、いよいよびっくりして山に登るのをやめて、家にひきかえしました。

家につくと、おかみさんが、「どうしたんです、山へ行かなかったのですか、何か忘れものでも。」とたたみかけるように聞きました。お百姓さんは「池で美女にあった。」という返事だけです。何が何やらわからないおかみさんは、「あんた疲〈つか〉れているんでしょう休んだらいいのに。」といって、ふとんをしいて主人をねかせました。
ねかせる時は、青ざめた顔で、かなり熱もあるようでしたが、翌日になるとすっかりよくなりました。
けれども、ふしぎなことがあるもんだと近所の人に話しました。ところがそれを聞いて、もっぱらのうわさになりました。
「そんなことがあるものか、池の中に娘さんが出るなんて。」といって、ひやかす者もあり、「よしわしも池へ行って娘さんとやらに会ってやろう。」という元気者も出ました。そうこうしているうちに元気者二、三人が連れだって池へ行って来ましたが、ふだんとちっともかわらない池があるだけです。
やがて「よっぽどねぼけていたのだろう」とみんなは笑ってしまうようになり、いつしかこの噂〈うわさ〉もきえてしまいました。

秋もすぎ、冬もすぎて、新しい春をむかえて、再び夏がやってきました。お盆が近づいて、それぞれご先祖さまの供養〈くよう〉のために、奥山へ樒〈しきみ〉をとりに出かけました。
この地方の庄屋さんが朝早く、下男をつれてこの池の堤にさしかかった時、生〈なま〉ぐさい風と共に朝もやの中から、それはそれは美しい女があらわれて池の面にたっているではありませんか、下男がびっくりして、「だんなさん、美女が。」といって、庄屋さんにすがりつきました。庄屋さんは“ああ去年うわさのあった美女とは、まさしくこのことだな”と、すぐさまひっかえして、みんなに話しました。昨年は信用しなかった人たちも、二人が見たということと、庄屋さんの話だというので、すっかり信用しました。
それから誰れいうとなくこの二つの池を美女の出る池、美女池と呼ぶようになりました。

その後も美女池で、美女を見たという人がちょいちょいあったということを古老の方から聞きました。
ある法師さんがこんなことをいっていました“大蛇は川に百年、池に百年、海に百年の修業をつんで天に登る力を得る。ちょうど潮岬から来た大蛇〈だいじゃ〉は池で修業中、たいくつしのぎに、人々をびっくりさせたのだろう。三百年の修業をつんだ大蛇は、龍〈りゅう〉となって天に登る、その時龍巻〈たつまき〉がおこるんだ”と。
しかし今も美女池には奥深い洞〈どう〉くつがあり、潮岬にも長い洞〈どう〉くつがあります。潮岬から美女池まで通じていたと昔の人は思っていました。大蛇の通る道として。

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