ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』東播編 > 盲杖桜〈もうじょうざくら〉(明石市大明石町)
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更新日:2013年2月25日
むかし、筑紫〈つくし〉の国(九州)から、一人の目の不自由な人が、人麿の塚におまいりにきました。
その人は、目がよくなるよう一心においのりしました。そして、十七日間、人麿の社〈やしろ〉におこもりし、満願〈まんがん〉の日に、「ほのぼのと、まこと明石の神ならば、一目〈ひとめ〉は見せよ、人まろのつか」と、歌をよみました。すると、そのま心が通じたのでしょう。一目だけぱっと目があいたのですが、その喜びもつかのまで、また、もとのようにふさがってしまいました。
なぜ、また目がふさがったのか、不思議〈ふしぎ〉でなりませんでした。やがて、「ああ、そうだ、一目は見せよといったから一目だけあいたのだ。自分の歌がわるかった。」と気がつきました。また、七日間、おこもりしました。こんどは、「ほのぼのと まこと明石の神ならば、われにも見せよ 人まろのつか」と、よみなおしたところ、すっかり、目があきました。
目が見えた喜びは、天にものぼる心地です。もう杖〈つえ〉の用はないので、社前につきさして、帰っていきました。
その杖〈つえ〉から、あくる年の春に芽〈め〉をふき出して、一本のさくらとなり、花が咲〈さ〉き実〈み〉がなるようになりました。この話は、人麿塚が、明石城の本丸にあった時代のことで、もちろん、お城もできてないずっとむかしのことでした。
(明石市郷土史から)
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