貧乏唐〈びんぼうから〉うす(黒田庄町)
むかしは貧乏〈びんぼう〉な百姓〈ひゃくしょう〉が多く、米や麦を上屋〈じょうや〉(ざいさんもち)から借〈か〉りて食〈た〉べる家が少なくなかったようです。唐〈から〉うすはそれをよく知っていたようで、米や麦をつき始〈はじ〉めると、きまって、いつもこんなことをいったものです。
「カッタンコ、カッタンコ、カッタンコ。」と、始〈はじ〉めのうちはそう問〈と〉いかけてきたものです。
「借〈か〉ったんじゃないわい、買〈こ〉うてきたんじゃわい!」と答〈こた〉えると、
「ゴショコ、ゴショコ、ゴショコ。」とまた何〈なん〉べんもあざけりながら問いかけてくるので、
「五升〈ごしょう〉じゃないわい、一斗〈いっと〉じゃわい。」というと、こんどは、
「キイットカッタンコ、キイットカッタンコ。」と、だめをおすように何べんもひつこくいうので、こちらも腹〈はら〉がたってきて、
「きっと、買〈か〉ったんじゃわい。」と、どなると米がつけたものです。
この「キイット」というのは、唐うすの油〈あぶら〉ぎれの音〈おと〉です。