歯無〈はな〉しじいさん(相生市)
むかし、近くの村に、話の上手な、おじいさんが住んでいました。このおじいさんは、毎日藁仕事〈わらしごと〉をしていました。ある日、村の子どもたちが、
「おじいさん、きょうも話をしておくれ。」
といいました。
「よしよし、してやるから、その前にこの藁打〈わらう〉ちを手伝っておくれ。」
子どもたちは喜んで、藁を打って手伝いました。
やがておじいさんは、
「わしの口を見ろ。」
といって、口を一ぱい大きくあけました。子どもたちがのぞくと、そこには歯が一本もありませんでした。すると、おじいさんはいいました。
「それ、それ、歯なしだ。」