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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』淡路編 > トントン山の芝太郎〈しばたろう〉(津名町佐野)

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更新日:2012年9月17日

トントン山の芝太郎〈しばたろう〉(津名町佐野)

今では人間が天下を取っているけど、昔はそうではなかったんだ。狸や狐がいばりくさって、人間もよくこの狸や狐にばかされたもんじゃ。

そうそうちょうど東浦町と津名町の境あたりかな。そのトントン山に洲本の柴右衛門の息子の芝太郎が住んどったのだ。おとっつあんの殺された、浪速〈なにわ〉(大阪)へ一ぺん行ってみたいと考えとったが、何せ淡路から浪速までは、あのでっかい大阪湾というものがあるだろう、それで芝太郎は、大阪湾をどないしたらよいかと弱っとったんだ。ちょうどその下の海を仮屋〈かりや〉の佐衛門が浪速へ鯛〈たい〉を持っていって売ろうと由良〈ゆら〉から船を出していたのが通りがかった。
「そうじゃ、あの船に乗ったらちょうどよい便じゃ。」
と、とび乗ったが、せまい船の中じゃ、すぐ見つかってしもた。
「佐衛門様、どうかおたのみします。わっしのおやじの殺された浪速へ行ってみたいので。」
あまり熱心に頼むので根がえらいやさしい佐衛門はついほろりとして、
「それはかわいそうに、よし分かった乗せていたるぜ。とっつあんの弔〈とむら〉いをあんじょせいよ。」

そういうことで船に乗せてもろたが、腹がへって腹がへって何ぞ食べたいと思っとる前に、うまい鯛がいっぱいあるだろう。しんぼうしきれいで鯛の目玉をぬいて食べてしもたんだ。
「こら、何をしでかすんだ。せっかくのたいをだいなしにしてしもて、こらッ殺したる。」
佐衛門はごっつい棒を持ってきて芝太郎を力一ぱいなぐったら、芝太郎は泣きもって、
「どないぞ、こらえて下され。つい腹がへっとったんで食べてしもた。そのかわり何でもご恩返しをしますよって、どうかゆるして下され。」
あんまり泣いてあやまるのでこらえてやった。ご恩返しというてもお金をもうけにゃあかんので、どないしたら、一ぺんにぜにもうけができるかと考えた。この時昔のぶんぶく茶釜〈ちゃがま〉のことを思い出したんで、
「どうじゃ金の茶釜にばけてくれ。ほしたらええ値で売れるさかい。」
「ばけるのはおやすいご用だ。その上おとっつあんが芝居が好きだったんで、よう見に行き、もどって来たら、まねをして見せてくれたんで、大分いろいろの芸もおぼえとるよ。」
「とにかく、金の茶釜にうまくばけてくれ。」
芝太郎はピカピカ光るそれはええ茶釜にばけたんだよ。佐衛門は浪速で高い値で売った。びっくりするほどええ値で売れたので、佐衛門はホクホクして仮屋へ戻って来た。

一方売られた芝太郎は、しばらく、その家の床の間にすわっとったが、家の人のすきを見て逃げだしてしもた。そして浪速見物としゃれこんだのだ。
「やっぱりおとっつあんが言よっただけあって、浪速はええとこじゃ。中座(柴右衛門が殺された劇場で今もある)へ行ってねんごろに拝んでおこ。」
柴右衛門の供養〈くよう〉をねんごろにしてまた芝太郎は淡路に戻ってきた。
「やっぱり、おらがうちのトントン山は一番ええわい。」
きれいな月夜の晩には、ポンポコポンポコ腹づつみを打ちながら芝太郎はトントン山で、しこをふんでいた。その音を聞いた山の下の人たちは、
「今夜も山でトントン音がしている。やっぱし山の下はうとつぽになっとるわい。」
こういいながら家内そろってにぎやかに、夕はんを食べたということじゃ。

(仮屋 高田成樹氏 談)

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