ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』但馬編 > なぞの釣鐘(村岡町)
ここから本文です。
更新日:2012年6月20日
むかし、村岡の寺河内・塔の岡に妙見寺という寺がありました。その寺は、松の老木に囲まれていて、一時はたいそう栄え、人々の信仰を集め、遠くからの寺参りの人も絶えなかったそうです。
ところが、そのごしだいに衰えて、寺もなくなってしまいました。
そして、いつのころからか、その寺にあった大きな釣鐘が、村の石橋の下に埋っているという噂が次々と村中に伝わりました。
ある日、村のひとたちが相談して、その釣鐘を掘り出してみようということになりました。村の総仕事で、人々がいよいよ石橋の下を掘りだそうとすると、「火事だ、火事だ。村が焼ける!」とわめく(叫ぶ)者がいたので、人々はみな仕事をやめて、おお急ぎで帰ってみました。
しかし、火事らしい様子はどこにもありません。
「変なことをいうて、みなをびっくりさせるなっちゃあ。」と、人々はくちぐちにいいながら、橋の下へもどり、また仕事にとりかかりました。
すると、また「火事だ。火事だ。村が焼ける!」というわめき声。
今度は、みんながはっきりと聞きました。「こりゃあ、てえあへんだ(大変だ)。」と、人々が先を争って帰ってみると、やはり火事もなんにもありませんでした。
そこで、だれが「火事だ。」といったのか調べることになり、ひとりひとり調べましたが、そんなことをいった者はだれもなく、人々はなんだかこわくなって、とうとう釣鐘を掘ることをあきらめてしまいました。
そのごも、何度か掘り出そうとする人があったらしいが、そのたびにどこからともなく、「火事だ、火事だ。村が焼ける!」というわめき声がきこえ、みんなこわくなって、だれも掘らなくなったということです。
今の妙見山の名草神社は、この妙見寺から別れていったという説があります。
三・四年前も、村の人たちが、ほんとうに「火事だ、火事だ。村が焼ける!」と、きこえるだろうか。石橋の下に釣鐘があるだろうか。と、掘ってみたそうですが、一メートルほどの地の中から、大きな石がでてきただけで、わめき声はなにも聞こえなかったそうです。
掘る場所をまちがえたのでしょうか。
ほんとうに、大釣鐘は埋っているのでしょうか。
『村岡町 上坂重太郎 談』
お問い合わせ