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ホーム > 学校・授業の教材 > 『郷土の民話』中播編 > さぎの清水〈しみず〉(姫路市本町)

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更新日:2013年2月18日

さぎの清水〈しみず〉(姫路市本町)

姫路城の西北に清水門〈しみずもん〉という門がありますが、その門のところに大へんよくすんだ、きれいな清水〈しみず〉が出ていました。あるとき、姫路城のお殿さまと、都からきてお殿さまのご用をつとめている商人とが、話しあっていましたが、話がとうとう茶の湯のことになりました。商人は、
「都の茶の湯は、柳〈やなぎ〉の水か、宇治〈うじ〉のまきの島の水をくんで茶をわかしますために、よそとちがったおいしいお茶になるのでございます。」
といいました。するとお殿さまは、
「都のお茶はそうであろう。しかしながら、わが姫路にもこの城内からわき出る『さぎの清水』は、都の柳の水にもあまりおとらないであろう。」
と申〈もう〉されました。商人は、
「それでも都の柳の水にはかないますまい。」
といいはりましたので、ついにいいあらそいになりました。そこで姫路のお殿さまは、商人にむかって、
「それではおまえが姫路にいる間に、柳の水をくんでこさせて、こちらの清水とよしあしをくらべてみよ。」
といわれました。商人は、
「仰〈おお〉せではございますが、都からはるばるとくみよせていますと、水の性質〈せいしつ〉がそこなわれてくらべようができません。」
と申しあげました。するとお殿さまは商人に、
「それは、おまえの知ったことではない。」
といわれ、まったく同じ樽〈たる〉を四つ作らせ、四人の力持ちに持たせてそれらの者たちに、
「おまえたちの中の二人のものは、都へ上り、きたる十五日の早朝に柳の水をくんで、夜を日についで姫路までくだるべし、残る二人は、きたる十五日の早朝にここの清水をくんで、急いで都へのぼるべし。そして両方の者が出合った所でつれだって帰るべし。」
と、いいわたされました。

こうしてほどなく両方の者が、それぞれの水をくんで帰ってきました。そして、お殿さまの前でかけくらべをしましたが、少しもちがうところはありません。そのうえ、この水でお茶を入れ、茶の湯の名人たちが味をためしてみましたが、勝負はつけようがありませんでした。またこの清水よりほかの水をくみよせて、お茶を入れましたが、風味ははるかに劣ったということです。そこでお殿さまは、
「これは、まことに名水なることよ。」
といわれて、秘蔵〈ひぞう〉の清水とされ、清水の周辺に石畳〈いしだたみ〉をしきそのうえに屋根をつけ、流れには三河の国から取りよせた「やぶみょうが」を植えられるほど、大切にされました。そこで、茶の湯をする人もこの水を願うけれども城中のことでもあり、そのうえにこれからのちは、かこいにかこまれた井戸となって、くみとることはできなくなりました。そのため、やっと川に流れおちる水をくんで、いっぷくの茶を立てると、何ともいえない風味があり、のどをうるおすうまさがある名水であったといわれています。

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