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大野麥風(ばくふう)(1888–1976、本名・要蔵)は東京・本郷に生まれ、長原孝太郎に洋画を学びました。1917(大正6)年頃より日本画へと転じ、卓越した写実表現によって独自の画境を切り拓いた画家です。1925(大正14)年に西宮市へ移住して以降、亡くなるまでのおよそ50年間をこの地で過ごし、その創作活動で西宮の芸術文化を語るうえでも欠かすことのできない足跡を残しました。 麥風の代表作『大日本魚類畫集』(1937~1944年刊)は、西宮書院から刊行された全72点・限定500部の木版画集であり、日本近代版画史を代表する傑作として高く評価されています。麥風は水族館での写生にとどまらず、和歌浦沖では潜水艇に乗って魚の生態を自ら観察するなど、対象への飽くなき探究を重ね、生命感あふれる原画を描き上げました。それらは、彫師・摺師の卓越した技による「原色木版二百度手摺り」と称される精緻な多色摺木版によって鮮やかに摺り上げられ、芸術性と学術性を兼ね備えた比類ない画集として結実しました。 同展では、『大日本魚類畫集』全72点をはじめ、原画や摺り見本などの関連資料を西宮で初めて一堂に公開するとともに…
平安時代に紫式部によって著された『源氏物語』は、日本文学史を代表する王朝物語です。雅な宮廷を舞台に繰り広げられる光源氏や個性豊かな女性たちの恋愛模様、人生模様は、後世読み継がれる中でさまざまな文化や美術を生み出しました。 本展では、源氏物語の場面やモチーフを表した麗しい絵画、工芸品を一堂に集め、後世につくられた写本や注釈類、さらに芸能への広がりも紹介することによって、わが国の文化に豊かなかがやきを与え続けたこの名作の魅力を再発見します。藤原定家が校訂した写本「青表紙本」や、国内外で分蔵され全体像がわからないゆえに“幻の源氏物語絵巻”とも呼ばれる「源氏物語絵巻(盛安本)」など、過去最大規模、約250件(予定、巡回含む)の多彩な文化財をご覧いただけます。 京都国立博物館での源氏物語展の開催は、約50年ぶりとなります。どうぞご期待ください。
一本の木には、それぞれ固有の形と表情があります。ジョージ・ナカシマ(1905–1990)は、その個性を生かす家具を追求した家具デザイナーであり木工家です。節や割れ、年輪のゆらぎを受け止めて生まれる造形は、工業製品とも工芸品とも異なる存在感を放ち、そこには素材への深い敬意に根ざしたものづくりの思想が息づいています。 同展では、60年以上にわたり唯一日本でナカシマの家具を製作し続ける香川県・桜製作所の現場に焦点を当てます。一本の木を見極め、かたちへと導く職人仕事から浮かび上がるのは、大量生産や模倣とは一線を画す、素材と向き合う誠実なものづくりの姿です。木の生命を「かたち」へと導く職人たちの営みに触れ、ものを使い継ぐ豊かさを見つめ直す契機となれば幸いです。
「日本画」とは、日本の伝統的な絵画の総称ですが、一般には、明治時代以降、西洋から伝えられた油彩画と区別するために生まれた呼称です。墨や膠(にかわ)、岩絵の具といった日本古来の伝統的な画材を用いて描かれており、近世以前より伝えられてきた技法や表現に、西洋画などの影響を取り入れながら変化し、展開してきました。本展では、当館の所蔵品・寄託品の中から近代日本画の優品を展示し、その歴史的な流れを振り返ります。 また、特集展示として奈良ゆかりの日本画家・庄田鶴友(しょうだかくゆう)と植中直斎(うえなかちょくさい)の作品を紹介します。鶴友による情感豊かな風景画や直斎が描いた歴史浪漫溢れる人物画を通して、日本画の持つ魅力や特質を探ると同時に、時代を越えて受け継がれてきた日本画特有の感性や美意識に触れる機会となれば幸いです。
土を焼き固めるという意味では、長い歴史を持つやきもの。けれども、自由なかたちを得て、現代アートと同様に多種多様な表現が生まれたのは、じつは戦後から。まだまだ新しいものなのです。その名も「現代陶芸(ゲンダイトウゲイ)」。本展では、特にうつわではない、いわゆる立体作品に注目し、当館の現代陶芸コレクションの中から、各時代を代表する作家の作品を抽出し、緩やかな年代順でご紹介します。「クロニクル」には、「年代順に記録する」というほかにも、「壮大な物語」というような意味もあります。すべての時代を詳細に追うことは叶いませんが、展示を見進めていくうちに、それぞれの時代の潮流や熱気から、陶芸表現の広がりとダイナミズムを体感いただけるのではないでしょうか。 本展ではまず、現代陶芸のパイオニア世代のレジェンド・林康夫(1928- )の作品に焦点を当てます。林の作品をクロニクルに振り返ること=現代陶芸の歴史を知る、と言っても過言ではありません。林は1947年に前衛的な陶芸制作を目指して京都で結成された「四耕会」に19歳で創設メンバーとして参加し、「芸術への希求をやきもので挑んだ」気鋭の作家。98歳となっ…
敬虔なカトリック教徒だったジョルジュ・ルオー(1871-1958)は、近代化が進むフランスにおいて、同時代の芸術潮流とは距離を置いた独自の作品を生みだしました。彼が暗い色調でとらえはじめた、曲芸師ら社会の片隅に生きる人々の険しい表情は、時を経るにつれやがて、穏やかで慈愛を湛えたまなざしをもつようになり、塗りかさねた絵具は厚みを増します。この表現や技法の変遷は、聖書に基づく主題を描いた作品にもみられ、画家が世俗の人々の姿のなかにキリストを見いだし、両者をかさね合わせて描き出そうとしていたことを感じさせます。 開館30周年記念企画展のひとつである同展では、アサヒグループ大山崎山荘美術館所蔵全4点のルオー作品に、日本国内でのルオー研究の拠点であるパナソニック汐留美術館の所蔵作品約35点を加え、画家が聖俗両方の主題にあらわした祈りを浮き彫りにします。
アンパンマンの⽣みの親・やなせたかし(1919-2013)の初の⼤規模巡回展です。 漫画家、詩⼈、絵本作家、イラストレーター、デザイナー、編集者など多彩な活動を繰り広げたやなせは、極上のエンターテイナーでもあります。彼は「⼈を喜ばせること」を、⼈⽣最⼤の喜びとしていました。 苛酷な戦争体験、家族との別れ、様々な⼈との出会いに揉まれ、「なんのために⽣まれて、なにをして⽣きるのか」を⾃分に問い続けたやなせが辿り着いたのは、かっこ悪くても、本当に困っている⼈に⼀⽚のパンを、「あんぱん」を与えられるヒーロー像です。 同展は、2026年にやなせたかし記念館アンパンマンミュージアムが30周年を迎えたことを記念し、原画 約200点を中⼼に、「やなせたかし⼤解剖」「漫画」「詩」「絵本/やなせメルヘン」「アンパンマン」のテーマで作品を紐解きます。私たちに勇気を与え続ける作品を是⾮ご覧ください。
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