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2009年に神戸に開館したBBプラザ美術館は、2024年7月に15周年を迎えました。 同館コレクションは近現代の日本・フランスの作品で形成しています。この度、前期・後期の2回にわたり、コレクションから関西ゆかりの作家とエコール・ド・パリを核としたフランスの作家を紹介します。 後期で紹介するマリー・ローランサンやマルク・シャガールらは、エコール・ド・パリ(パリ派)と称され、パリで一時代を画した作家たちです。特定の思想や様式を持ちませんでしたが、共通するのは自らのスタイルを追求し、心を注ぎつづけた姿勢でしょう。フォーヴィスム(野獣派)のモーリス・ド・ヴラマンクやアンドレ・ドラン、パリでパブロ・ピカソらと交流したサルバドール・ダリなど、彼らの作品をとおし19世紀から20世紀にかけて生まれた美の潮流とその背景にある物語を辿ります。 既成の領域にとらわれることなく、国や時代を超えて活躍した作家たち同様、美術館でもこれからますます広い視野を持つ展開が待望されます。本展を、地域に根ざすBBプラザ美術館の明日への出発となる新たな一歩としたいと考えています。昨日から今日、そして明日へと移る彼らの眼…
イタリア北部の都市ボローニャで開催されている世界で唯一の子どもの本専門の国際見本市「ボローニャ・チルドレンズ・ブックフェア」は1964年に始まりました。このブックフェアでは毎年、絵本原画のコンクールが行われており、世界各地から多くのイラストレーターが作品を応募しています。5点1組のイラストを用意すれば誰でも応募できる公募展で、絵本の専門家である審査員たちによって、すでに絵本として発表された作品も未発表のものも全て公平に審査されます。入選を機に作家としての一歩を踏み出す人も多く、絵本作家の登竜門として長年続いてきたコンクールです。 西宮市大谷記念美術館では、このコンクールで入選した作品を紹介する「ボローニャ国際絵本原画展(ボローニャ展)」を、1978年から毎年恒例の展覧会として開催してきました。 今年は81カ国・地域から3,520組の応募があり、日本人4人を含む32カ国・地域の78作家が入選を果たしました。本展では全入選作品を紹介します。国際色豊かな作品を是非お楽しみ下さい。入選作の他にも、特別展示としてSM出版賞を受賞したアンドレア・アンティノーリ(2023年受賞/第13回)の作品…
はるか昔から日本の人びとにとって、小さく儚い「虫」は身近な存在でした。なぜなら、「虫」は日本列島のもつ豊かな自然環境の写し鏡であると同時に、生活のなかに深く息づくものとして、人びとの感性と文化を形成してきたからです。一方で「虫」たちは人びとの暮らしに利活用され、さらには神仏のように崇められ、化け物として畏れられてきました。それは豊穣の恩恵と無慈悲な天災という自然のもつ二面性ゆえであり、伝説、風習、信仰という形で日本の人びとの心に刻まれているのです。 このたび市立伊丹ミュージアムでは、この日本の文化と歴史のなかにさまざまな形で登場する「虫」について、美術・工芸・俳諧・歴史の多彩な分野の作品資料約140点を通してご紹介します。人びとが「虫」についてどのように認識し、研究し、愛でてきたのかを多角的に知るとともに、多種多様な「虫」の奥深い面白さを知る機会となるでしょう。
抽象画家・白髪一雄(1924-2008)は、床に広げたキャンバスの上に絵具の塊を置き、天井から吊るしたロープにつかまってそれを素足で画面全体に展開させる方法で描きました。全身の力を込めて描かれた迫力のある作品は観る人に強烈な印象を与え、世界的に高く評価されています。 白髪が素足で描くアクション・ペインティングを開始した1950年代後半、当時所属していた前衛美術グループ「具体」では、「これまでになかったものを創り出す」ことを目指し、若い会員たちが自由な発想で新しい表現を次々に生み出していました。なかでも特異な白髪の作品は、来日したフランスの美術評論家ミシェル・タピエに賞賛され、彼を通じて海外にも広く知られるようになります。 白髪は生まれ育った尼崎に強い愛着を持ち、83歳で亡くなるまで当地に暮らし、制作しました。生誕100年を迎える今年、生誕の地・尼崎においてその足跡をたどります。 本展では、作品だけでなく、作品が生み出された背景にも光を当て、エネルギーに満ちたアクション・ペインティングの原点ともいえる尼崎の祭りの記憶をめぐる資料や、生家「木市呉服店」にあったアトリエの再現、…
我が国最古の歌集『万葉集』には、男女の恋歌を主とする「相聞(そうもん)」に分類される歌が多くおさめられています。それらの歌の数々には、お互いを想う歌や、恋い焦がれる苦しみ、嫉妬する気持ちが込められたものもあり、およそ1300年の時を超えてなお、当時の人々の思いをありありと今に伝えます。 本展では、恋の歌をモチーフに描かれた「万葉日本画」を中心に、下絵や素描なども紹介します。万葉のひとびとが織りなす恋模様に思いをはせていただければ幸いです。
日本画家・山辰雄(1912-2007)は大分に生まれ、中学校卒業後に東京美術学校(現・東京藝術大学)日本画科へ入学します。在学中、第15回帝展に初出品した《湯泉》が初入選する快挙を果たすとともに、東京美術学校を首席で卒業と、若き才能を開花させます。戦後まもなくポール・ゴーギャンの生き方に強く感銘を受け、彼の作風に傾倒するようになると、色鮮やかな抽象的表現を取り入れるなど、山の創作は常に挑戦的な試みが見られるようになります。1970年代以降、人間の精神性に触れるような作風へと変化し、独自の画業を確立していきました。更には1990年代の代表作となる《聖家族》の連作に象徴されるような、極端に色彩を抑えたモノクロームの表現へと続いていくのです。 本展では、山辰雄の70年以上に亘る画業の中から、《聖家族》を一つの頂点として、《聖家族》制作に至るまでの人物像を中心に展観します。ひたすら研鑽に励んだ学生時代の作品、ゴーギャンへの傾倒など、各時代の画期となる作品を紹介し、山芸術の全貌に迫ります。
哺乳類の中で完全に肉食に特化した “究極のハンター”、ネコ科。現在、41種の野生ネコ科動物が地球上の多様な環境に適応し、生態系のさまざまな生き物と関わり合って暮らしています。 本展では、ライオンやマヌルネコなどのクールでカッコいい野生ネコ科動物から身近なイエネコまで、最新の研究に基づいてネコ科動物がもつ魅力に科学で迫ります。 剥製や骨格標本、映像を交えた展示で、”超肉食獣”として進化したネコ科の身体の特徴や野生の生態を解説し、日本に生息するヤマネコとそのフィールド研究・保全なども詳しく紹介します。また、イエネコについても、野生ネコ科動物との共通性から注目の最新研究までを楽しく学べます。ネコを深く知って今よりもっと好きになる展覧会です。
本展覧会では、美術家・梅津庸一(1982-)の、2000年代半ばより始まる仕事を総覧します。油彩による裸の自画像、多彩な抽象ドローイング、映像、陶芸、版画などの作品をとおして、梅津はこれまで、日本の美術(制度)史への愛憎半ばする批評的態度を表明してきました。また、その活動は作品制作だけにとどまらず、私塾の開設や、展覧会の企画、非営利ギャラリーの運営、テキストの執筆へも展開しています。彼の多種多様な活動を貫いているのは、「この国で美術家として生きることはいかにして可能なのか」という問いです。本展覧会は、そんな梅津からの問いかけを起点に、「人がものをつくる」という行為の可能性について根本から再考することを目指します。
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