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更新日:2013年1月14日

青倉さんのお水(朝来町)

むかし、青倉山のふもと、伊由谷在〈いゆだにざい〉に、ひとりの老爺〈ろうや〉と息子とが住んでいました。息子は田畑で終日〈しゅうじつ〉すきくわをふるい農耕〈のうこう〉に精〈せい〉を出し、老爺は農耕の片手間〈かたてま〉、近くの山に登り山菜〈さんさい〉をとり、生活の糧〈かて〉としておりました。

きょうもきょうとて、老爺はよい天気なのを幸いに、山に登り、野生〈やせい〉のうどを取っておりました。今まで、あまり来たことのないところで、多くのうどがあり、ふと気がついた時には、伊由谷から遠く納座〈のうざ〉の村をすぎ、青倉山に登っておりました。あまり遅くなると息子が心配するので、明るいうちに帰えろうと、今まで取ったうどをたばね、それを背負い、やおら立ちあがろうとした時、どういうはずみか足をとられ、よろけて倒れてしまいました。
そのひょうしに、自分の刈り取ったうどの木で、誤〈あや〉まって右の目をさしてしまいました。びっくりした老爺は、血のしたたる目を押さえ痛さをこらえて、ころぶように、息子の待つわが家へようやくのことで、たどりつきました。

これを見た息子は、驚きあわて、医者とてないころですので、水で冷やすやら、近所の年寄〈としよ〉りの知恵をかりるやら、いろいろ手をつくしましたが、老爺は痛がってしかたがありませんでした。
手のほどこしようもなく、どうしてやることもできぬ息子は、一心〈いっしん〉に神仏〈しんぶつ〉に願うより方法がありませんでした。そのうち老爺も少し落ちつき、息子も昼の労働と一晩中の看病に疲かれ、老爺の枕〈まくら〉もとで、うとうととしました。

その息子は評判の孝行息子であり、心のやさしい人でしたので、わずかの夢枕〈ゆめまくら〉に、ひとりの白衣〈はくい〉を着た年老〈としお〉いた行者〈ぎょうじゃ〉のような人が立ち、
「山を越えて、高い山の滝のある所の水を取って来てつけよ。」
と、言うと煙のように消えてしまいました。
はっとした息子は、あわてて老爺を見ますと幸〈さいわ〉いにも、うとうとと眠っております。まわりもうっすらとしてきましたので、この間にと老爺のことを近くの人々にたのみ、夢のお告〈つ〉げをたよりに、どんどんと川をさかのぼり、滝のあるところをさがしました。
あちらの山、こちらの山とさがしまわり、疲〈つか〉れきって泣きたいような気持ちになった時、ふと見ると、小さな祠〈ほこら〉がありました。わらにでもすがる気持ちで、祠の前にたたずむと、その祠の上に滝があるではありませんか。息子は、これに違いないと大喜びで腰にさげたひょう(わらであんだ袋)に水をくみ、とぶようにして家に帰り老爺の目をその水で一心に洗〈あら〉ってやりました。
するとふしぎにも、あれほど痛かった目の痛さがうそのようにとれ、うっすらと見えるようにさえなったではありませんか。息子のよろこびは、いうまでもありません。
これを伝えきいた、ふきんの目の悪い人々が、ぞくぞく山に登り、美しい水で目を洗い、次々となおり、よろこんで山をおりたそうです。

これから、青倉山〈あおくらさん〉のお水は、目によいとされ、遠くの方よりも、礼拝者〈らいはいしゃ〉が来るようになりました。このことから、青倉山の氏子〈うじこ〉は、うどを食べなくなり、伊由谷在〈いゆだにざい〉も青倉さんの氏子になったということです。

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