• お問い合わせ
  • 文字サイズ・色合いの変更
  • サイトマップ
  • 携帯サイト

メニュー

ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』但馬編 > けんけん・ばぁたばた(大屋町和田)

ここから本文です。

更新日:2012年12月24日

けんけん・ばぁたばた(大屋町和田)

むかし昔。ある所に。おじぃさんとおばあさんがあった。

ある日のこと、おばあさんが、山でおどろ(枝木=柴〈しば〉の古い言い方)こりをしておると、遠くの方で
けぇん、けぇん、ばぁーたた。ばあばが、しぃりぃひっつきたい。
けぇん、けぇん、ばぁーたばた。ばあばが、しぃりぃひっつきたい。
いう声が聞える。ばぁさんは、おとろしゅぅ(恐ろしく)なって、大いそぎで荷をしばじめると(しはじめると)、また、頭の上で
けぇん、けぇん、ばぁーたばた。ばあばが、しぃりぃひっつきたい。
いうで、おばあさんは、もう、じっとしておれん。走るやらころぶやら、フゥフゥいうて戻〈もど〉って
「おじぃさん、おじぃさん。今日は、山で、どらいおとろしいもん(たいそうおそろしいもの)に出合った。」
「おとろしいもんて、どんなもんじゃ。」
「どんなもん、いわれてもこまるが、こうこうじゃった。」
おばあさんは、まだ胸のどうきが高ぶり、ふるえが止まらないようです。おじぃさんは、やさしく
「ばあさんや、ばあさんも年じゃのう。あの山には、キジの鳥がよけぇおるで、そのキジの鳥が鳴いたもんじゃ。おとろしがるほどのことは、あるまいぞ。もし、こんど鳴いたら『ひっつきたけりゃぁひっつけぇ』いうたれぃや。」
いうて、元気づけると、おばあさんは、気を取りなおして、あけの〈あくる〉日も、山へ出かけました。
おばあさんが、山で木を切っておると、また
けぇーん、けぇーん、ばぁたばた。ばあばがしぃりぃひっつきたい。
いうて鳴きだした。おばあさんは、おじぃさんのことばを思い出して「キジの鳥めが、また鳴き出したらしいが、もう、おとろしいとは思わんぞ。」と、自分に言いきかせて、仕事をつづけています。すると、その声が、だんだん近づいて、頭の上で
けぇーん、けぇーん、ばぁたばた。ばあばがしぃりぃひっつきたい。
いうたで、おばあさんは、おじぃさんがおしえたように
「ひっつきたけりゃーひっつけぇ。」
って、大けな声でいうと、ザァーッと、たつまきが起きて、木の葉が、ドッと、まいあがった。そして、おばあさんは、その場にドスンと、しりもちをつきました。
おばあさんは、びっくりして、起きあがろうとするが、おしりが重うて起きられん。やっと起き上っても歩けん「こりゃぁ、えらいこっちゃ。」と杖にすがって、エッチラ、オッチラ家へもどって、
「おじぃさん、はよう来て、見ておくれぇの。わしは、しりが重とうて歩けんがの。」
おじぃさんが、とんで出て見ると、なんと、おばあさんのしりには、大判や小判が、ぎょうさんひっついとる。それで、二人は大金持ちになったそうな。

それを聞いた、となりの慾〈よく〉ばりばあさん、
「わしも大金持ちになりたいで、あしたから、山行きをする。」
いうて、毎日、毎日、山行きをしたが、仕事もせんと、きき耳を立てるばかりで、木がこれん。晩方になると、スズメのまくらほどの、小さい荷をせおうて戻る。で、じぃさんが
「あほなことは、するな。人のまねをすると、しりを切られる、いうぞ。」いうて、たしなめるが
「それでも、わしは、となりが、いかめえで(うらやましいから)、山へ行く。」
いうて、山行きを続けとると、ある日、ばあさんが待っていた声がきこえて来た。
けぇーん、けぇーんばぁーたばた。ばあばがしぃりぃ、ひっつきたい。
ばあさんは、大うけな声で
「ひっつきたけりゃあーひっつけぇ。」
すると、たつまきが起って、ばあさんのおしりに、松やにが、ドサッとひっついて、どうにも、こうにも動けん。それでも、まあ、いざったり、ほうたりして戻って、じぃさんに見てもらったが、松やには取れん「火をたいて、ぬくめたら取れるかも知れん。」と思って、ばあさんのおしりを、火にあぶると、とけた松やにに火がついて、
「あついわいや。あついわいや。」
いうて、いかな(さすがの)、よくばりばあさんも、大けな声で泣いたそうな。

お問い合わせ

情報管理部広報係

電話番号:078-331-9962

ファクス番号:078-331-8022