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更新日:2012年12月24日

弁慶岩(温泉町岸田)

暗い、暗い夜の道をさずり足で家にと道を急いでいた百姓が、前原清水というところにさしかかったところ、向の方にボーッと白いものをみて「迎えにきてくれたのかナ」とよろこんで立ち止まったところ、その白い塊はぐんぐん近づいてきました。闇〈やみ〉に浮んだその姿をみて思はず百姓は地べたにかじりつきました。それはせいの高さが二メートル以上もあり、頭のかみをふりみだした怪物でした。
ヂッと息をころして、地べたにへばりついている百姓に気がつかなかったのか、その怪物はズシンズシンと大きな足音をさせながら通りすぎました。
間もなく、ズーズーッという音がするので、そっと顔をあげて前をみると小川の水が逆さまに流れています。どうやら怪物が水をのんでいるようです。
それがやむとまた大きな足音がして、目の前を怪物は通りすぎました。
やっと昇ってきた月あかりの道を百姓は気ちがいのように村にかけこみました。
この道は牛の草かり山に行く一本道ですので、こうなると村の人は全く途方〈とほう〉にくれてしまいました。
困り切った村の人は弁慶にこの怪物を退治してくれるように頼みました。
早速、弁慶は馬にのって、この村にきてくれました。そして夕方から百姓の言う怪物の出るところにまっていました。
日が暮れてしばらくすると、その夜も怪物が水をのみにあらわれました。怪物がそばまで近づいたとき、弁慶は、
「エイッ」
とするどい気合とともに大なぎなたを風車のように廻して切りつけました。
馬はおどろいて飛上りました。
たしかに手ごたえがあったと思ったのですが、怪物の姿はパッと消えてもうそこにはありませんでした。それっきり何事もなく夜が明けました。
朝の光にみると昨日まではなかった大きな岩があり、その中程に雉刀〈なぎなた〉の傷が二メートルばかりもついており、そこから血が流れていました。
岩の下の方には馬のひずめのあとが二つついています。
怪物は岩にばけて弁慶に切らせようとしたのですが、岩になり切れないうちに弁慶に切られてしまったのでしょう。
今でも前原清水には大岩が弁慶の雉刀傷〈なぎなたきづ〉がついたままで横たわっています。

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