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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』但馬編 > 首なし赤ん坊(但東町赤花)

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更新日:2012年12月3日

首なし赤ん坊(但東町赤花)

むかし、鬼子母神のお山のふもとに、竹兄〈あん〉ちゃんと呼ばれるうすのろ・・・・がいました。もう二十才〈はたち〉もとっくに過ぎているのに、職にもつけず、毎日子守りばかりしていました。
近所の子供たちは、こんな竹兄ちゃんといつもいっしょに遊びましたが、相手がうすのろだと思って、小馬鹿にしたことばかり言ってからかいました。

ところが、ある日のことです。飴〈あめ〉ん棒をしゃぶっている子供たちのところに、子守りをしている竹兄ちゃんがやって来ました。
「わしにも飴ん棒くれいや。」
「お山の鰐口〈わにぐち〉についている綱から、麻糸とって来たらやるよ。」
餓鬼〈がき〉大将の平太が答えました。
「うん、そんなら行ってくるでな、もどったらほんまに飴ん棒くれよ。」
竹兄ちゃんは、もうすたすたとお山の登り口の方に向って歩いて行きます。
「もう日暮れだし、杉林のあたりまで行ったら引き返してくるよ。」
「でも、竹兄ちゃん本気だったぜ。」
後に残った子供たちは、心配そうにその後姿を見送っていました。

そんな間にも、竹兄ちゃんは大きなねんねこ・・・・の中の赤ん坊を、何度も押し上げ押し上げ、往復二キロメートル以上もあるお山の頂上を赤ん坊めざして登って行ったのです。山道がだんだん暗くなってくるので、いつもより急いで登ったせいか、汗びっしょりになっていましたが、それでも無事に鰐口の綱から麻糸を数本抜きとることができました。
「これだけあればよかろう。」
竹兄ちゃんは独り言をいって、また今来た道を帰りかけましたが、後から何か追かけて来るような気がして、いつの間にか勢いよく走り出していました。背中の赤ん坊こそ災難です。竹兄ちゃんがつづらおりのカーブを回るたびに、首がぐらりぐらりと左右に大きくゆれ動きました。
ところが、杉林のある、山道で一番暗いところをつき抜ける時のことです。何か後から強く引っ張る者がいるような感じがして、もう少しで倒れそうになった竹兄ちゃんは、
「誰だい、おれを引っ張るのは。」
とふり向きざまに叫びましたが、そこには誰の姿も見えませんでした。
「おかしいな。」
と小首をかしげた竹兄ちゃんでしたが、それでも何もなかったと知ると、前より一そう早く走り出していました。
こうして、やっと麓で待っている子供たちのところに帰りついた時には、もう日は西の山に落ちて、里の灯だけが目にチカチカ入る頃になっていました。
「おーい。麻糸とって来たぞ。」
「竹兄ちゃん、みんなで心配していたんだよ、でもよかった。さあ、飴ん棒あげるよ。」
竹兄ちゃんは、嬉しそうに子供たちからもらった飴をしゃぶりながら帰りかけましたが、薄明りの中で、この竹兄ちゃんの後姿をみた子供たちは、
「ギャー」
と大声をあげました。
竹兄ちゃんの背負っていた赤ん坊の首は、まるで引きちぎったようになくなっていたのです。

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