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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』但馬編 > むこの智恵〈ちえ〉だめし(養父町広谷)

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更新日:2012年10月8日

むこの智恵〈ちえ〉だめし(養父町広谷)

むかし、昔。ある所に大〈おお〉けな分限者(金持の家)があったそうな。そのえ(家)は、年より夫婦〈ふうふ〉に娘がひとりの三人暮し。田も畑もよけえあるし、山も広う持っとる。立派〈りっぱ〉な倉〈くら〉が、七とまえも八とまえも(ななやっつ)ある。それで、牛飼いや男衆、上女中に下女中、飯たきおなごにせんだくばあさん。大ぜいの人間を使っとる。
ところが、そんなえ(家)じゃけど、娘は、いかず後家(オールド・ミス)かと思うほど、むこがない。それは、てて(父)親が、無理な智恵〈ちえ〉だめしをするでじゃ。家はよし、金持ちで、娘は美しいし、やさしいええ娘じゃ。あっちこっちから「わしを、むこにしてくれ。」「わしを智恵だめし、してみてくれ。」いうて、毎日二人、三人くるけど(けれど)、てて親の気に入る若者がない。そのうちに、娘は、だんだん年をよらせる。まあ、そんなわけじゃった。

ある日のこと、みすぼらしい男が出て来て、
「うら(私)は、むこにしてくれんでもええ。けど、一ぺん智恵〈ちえ〉だめしをしてみてくれ」という。
見れば、顔は、うすぎたない。着ておる物は、つぎはぎの汚れた山着じゃ。てて親は、一目見て「こんなの、あかんあかん。」思ったけど「いやまてよ、人は見かけによらんもの。」と、思い直して
「まあ、上ってくれぇ。」
男が、座敷〈ざしき〉にあがると、だしぬけに、
てて親が「たたかん太鼓〈たいこ〉の鳴る太鼓、どうじゃ。」というと、すかさず
男は「はりこ(紙ばりの入れ物)の中にハチ入れて、たたかん太鼓〈たいこ〉がブンブルブン。」
てて親が「輪のない酒だる、赤いひも。」といえば
男は「そりゃあ(それは)ヒョウタンのことかいな。ふさをまっ赤に染めあげて。」
男は落〈お〉ちついて答える。てて親はすっかり感心して
「もう一つ、一石〈こく〉六斗〈と〉に輪が二つ、桶〈おけ〉も二つじゃ。さてなんじゃ。」
「ハトを二羽のことかいな。」
ハトは八斗、八斗と八斗で十六斗、つまり一石六斗じゃ。二羽で輪が二つ。うまいことぅいうたで、てて親は大よろこび「うちのむこになってくれ。」というて頼み、とうとう、娘のむこにしたそうな。
その男は、そのえ(家)の主人になって、ええ智恵をだして、村のためにもなり、しやわせに暮したっていう、めでたい話じゃ。

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