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ホーム > 学校・授業の教材 > 郷土の民話 > 『郷土の民話』但馬編 > じいさんは、じっとしとれ(養父町建屋)

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更新日:2012年9月10日

じいさんは、じっとしとれ(養父町建屋)

昔、あるところに、じぃさんとばあさんが居〈お〉って、明けても暮れても(まいにち毎日)、木をこって来て(たきぎにして)、それを売って、まあ、細ぼそと暮しとったそうな。
ある日、じぃさんが、山でいっぷく(ひとやすみ)しとると、
「ピイピイ、ピイピイ…」って、小鳥の鳴き声がする。
「ハテ、妙〈みょう〉なことじゃ、尻〈しり〉の下で小鳥が鳴くがナ。」
じぃさんが、立つと、腰〈こし〉かけていた切り株〈かぶ〉の穴に、まんだ(まだ)小さいひよこが居る。ひよこ
「おお、かわいそうに。」
じぃさんが、つまみあげると、ピイピイ、バタバタもがいた羽(つばさ)の下は、はだかべす(赤はだか)「ほっとえたら死んじまう。」思ったじぃさんは、ほところ(ふところ)へ入れて戻〈もど〉って
「ばあさん、今日は珍〈めずら〉しいみやげがある。これみいや。」
「まあ、かわいげなヒヨコ、どないしなさった。」
「うん、こうこうだ。ほっとくと死ぬる思って取って来た。」
「そりゃあ、ええことをしん(しな)さった。わしらは子がない。これを子にして育てようの。」
いうて、トウシ(汰篩)にふせて、クモやミミズを取って食わせて、飼〈こ〉うとったら、ヒヨコは、だんだん大きくなって、もう、トウシの中では飼えんようになった。そこで、二人は
「ヒヨコやぁ、いつまでも飼〈か〉いたいが、お前を飼う籠〈かご〉がない。せぇで、かわいいが山へいんでくれ。」いうて、放してやったそうな。
それから、まあ、何日かたったある日、軒〈のき〉にとんで来た小鳥が
歌記号(いおり点)じぃさんは、地蔵山でジィーッとしとれ。ばぁさんは、せんだく川で、バアーッとしとれ。」
いうて、二度、三度鳴いて、パアーッとたって、山の方へいんでしまった。
それで、おじいさんが、地蔵山へ行てじぃーっとしとったら、ウサギが「うまそうな山いもがある。」と思って、足の間にとび込んだで「これは、うまいぐあいじゃ。」と、そのウサギを捕って戻〈もど〉るし、おばあさんが、せんだく川へ行て、バアーッとしとると、ナマズやウナギや、いろいろなジャコ(ザコ)が寄〈よ〉って来たで、そいつを捕って戻って、それを売りにいて、銭をようけもうけた。
「こんな、ええことはない。あしたも行てみるか」
「行きましょう。木こりよりも楽で、銭もうけが大きい。こんな、ありがたいことはない。」
と、いうわけで、それからは、明けても暮れても、じぃさんはウサギ捕り、ばあさんはジャコ捕りして、ちいとまのあいだ(少しのあいだ)に、大金持ちになったそうな。
ほんなら(すると)、隣〈となり〉のじぃさんが、いかめがって(うらやましい)、おじぃさんにたんねた(たずねた)。
「おまえ、なして(どうして)、そんな大金持ちになっただいや。」
「うん、実は、こうこうして金もうけをしただわぃや。」
「おまえ、ちいとま(少し)休めいや。ほして(そして)、わしらに代ってくれまいか。」
気のええ(よい)おじぃさんは、二つへんじで
「ええとも、ええとも、まあ、やってみるがよかろう。」
ところが、慾〈よく〉の深い隣のじぃさんは「ウサギ一つに男がかかるほどのことはない。」と思って
「ばあさん、お前は地蔵山へ行け、わしが、せんだく川へ行て、ウナギをようけえ捕ってくる。」
いうて、せんだく川へ行て、足をひろげて待っとったら、どんな拍子〈ひょうし〉か、スッポンが食いついて、
「いたいわいや、いたいわいや。」
いうて、泣いてもどってみると、おばあさんが、青い顔してふるえとって
「じぃさん、えらいこっちゃ。地蔵山には、マムシやヘビがうようよしとったがの。」
いうで、いかな慾ばりじぃさんも、ようよう(よくよく)こりて
「もう、慾ばったことはすまい。人のもうけを、いかめがるもんでない。」
いうたってナァ、そんな話がありましたわいナ。

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