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更新日:2012年6月20日

年おけの始まり(村岡町)

むかし、ある山の中に、古びた小さな家がありました。そこに、正直ものの可愛いい娘が住んでいました。
年も暮れ、寒い大晦日〈おおみそか〉の夕方のことです。神だなに、燈明をあげようと思いましたが、火だねを切らし、火をおこすこともできず、困りはてて、ひとり家の入口で泣いておりました。あたりは暗くなり、夕方から降りはじめた雪は、だんだんとつもっていました。

そのとき、ふとみると雪の中に火のひかりが動いています。近づいてみると、葬列が通っていました。雪の中の火のひかりは、その六燈の火でした。
娘は、火だねをくれるよう頼みました。ところが、葬式の火は人にやってはいけないのだそうです。しかし、娘があまり真剣にたのむので、葬列の人たちは、娘に火をやることにしましたが、葬列の人たちは火だけをやるわけにはいかないので、「この棺おけをあすまでおいてくれないか。」と、たのみました。
娘は、火をもらったお礼に、その棺おけをあずかることにしました。

「あすの朝は、かならずとりにくるから、火を消さないようにしてください。そうすれば、元旦の燈明にも火をつかえるから。」といって、葬列の人たちは帰って行きました。

娘は、約束どうり棺おけの前に座って、ひと晩中火をたやさないように番をしました。
元旦の朝。娘はいまかいまかと、棺おけをとりにきてくれるのを待ちました。が、とうとうだれもきませんでした。二日の日もきませんでした。娘は、泣き泣きそれでも火をたやさないように番をしていました。

三日が過ぎてもまだこず、とうとう四日の日を迎えました。
娘は、死人をあまり長い間おくと、臭くなりやがてくさってしまうと思い、困り果てた末に、おそるおそる棺おけのふたをあけてみました。
すると「びっくり!」、棺おけの中には、死人ではなくて、お金がいっぱい入っていたのです。
それからのち、娘はたいへん幸福に暮したということです。
以来、正月には、おけにかざりをつけて、中にお金を入れたり、米やもちを入れて祭るようになったのだそうです。そして、大晦日から正月三日まで、火をたやさないようにして、燈明をあげたということです。

『村岡町 日後覚太郎 談』

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