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更新日:2012年6月20日
城崎〈きのさき〉町来日〈くるひ〉といえば、豊岡盆地〈とよおかぼんち〉の北面〈ほくめん〉にどっかりとすわった「来日山〈くるひざん〉」のふもとの村ですが、昔、ここに、「鬼七兵衛〈おにしちべえ〉」という大そう力の強い百姓〈ひゃくしょう〉がありました。からだも、ふつうの人よりひとまわり大きく、それは、ばか力のあるがんじょうな男でした。
ある日、山仕事をしていた鬼七兵衛は、あやまってマキワリで、自分の足をたたいてしまいました。たいそうびっくりして、家にとんで帰り、改めて〈あらためて〉キズを見ますと、あれだけのいきおいで足をたたいたのに、切れていたのは、足のアカだけで、かわやにくは、どうもなかったそうです。近所の人もそれを見て、「鬼七兵衛さんは、すげえなあ。」「あの力で、マキワリをぶっつけても、アカだけしか切れんとわナ。」と、たまげたものです。
ところが、ある年、来日〈くるひ〉の村の入り口にある「堂々〈どうどう〉の石地蔵〈いしじぞう〉」のところに、化物〈ばけもの〉が出て、村人を大そう困らせました。
そして、この化物が鬼七兵衛の大力〈たいりき〉をいて、「力くらべをしたいものじゃ。」と申し出てきました。
鬼七兵衛〈おにしちべえ〉は「村人をいじめる化物め、めにものみせてくれん。」と、この申し出を受けました。
そうして、七兵衛は、その日になると、何を考えたのか、家で「えんどう豆」をいりまして、これを左のたもとに入れ、右のたもとには、小石を入れて、堂々の辻地蔵〈つじじぞう〉の所へ出かけました。
やがて、化物が現われ〈あらわれ〉ますと、七兵衛は、左のたもとの豆を口に入れ、「バリバリ」大きな音をたてて喰い〈くい〉ながら、右のたもとの小石をつかむと、「お前も喰え、これをおれのように、バリバリとかむ力があるか。」といって、化物にさし出しました。化物は、びっくりぎょうてん。七兵衛の歯の力の強いのに恐れをなして、後をも見ずに逃げ〈にげ〉さりました。
その後は、堂々の辻地蔵には、化物が出なくなり、村人は、安心してくらせるようになったといわれています。
『児島義一作「城崎語り草」の中から』
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