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更新日:2012年6月20日

八朔のはじまり(豊岡市)

大昔のことです。
豊岡付近一面の平野は、まだ泥海で黄沼、前沼といっていました。それで人々は住むのに十分な土地がなく、そのうえ悪いけものが、たくさんいたので、毎日のくらしに困っていました。

そのころ、今、五社明神といってお祭りしてある五人の神様がありました。この神様方は、人々の困るようすをごらんになり、どうかして、この土地をもっと広くし住みよいところにしたいとお考えになりました。

土地を広くするには、どこかを切り開いて、この泥水をすっかり日本海に流し出せばよかろうとお考えになりました。
ある日、出石の床尾〈とこのお〉山に登られて、泥海のうえをずっと見渡されました。すると来日口〈くるひぐち〉に大きな岩の横たわっているのが見えました。
「あの来日口の岩を切り開いて泥水を流し出し、土地をつくろう。」
「なるほど、それはよい考えだ。そうすれば、もっとたくさんの人が安心して住めるようになるだろう。」と五人の神様は相談なさって、力を合わせて、その岩を切り開かれました。泥水は、ごうごうとすごい勢いで流れ出しました。神様達は、大そう喜ばれて、そのありさまをにこにこしながら見ていらっしゃいました。

すると間もなく、泥海の真中から、にわかに大波がまき上ったと思うと、その中から、おそろしい大蛇が顔を出して「うううううう」とうなりながら、切り開いた来日口へ向かって、どんどん泳ぎ出しました。そして来日口に横たわって、水の流れをピタリとせきとめてしまいました。

このようすを見ておられた神様達は大そうおどろかれて「おう、これは泥海の主〈ぬし〉にちがいない。これを追いはらわなくてはいけない。」と言われて、それを追いはらわれますと、大蛇は大急ぎで、泥海の中に身をかくしてしまいました。
しばらくすると、また泥海の真中から大波がまき上ったかと思う間もなく、さっきの大蛇が来日口に横たわり水の流れをとめてしまいます。神様達が追いはらわれると、大蛇は泥海の中へにげこんでしまいます。しかしまた、いつの間にかあらわれて、水の流れをせきとめているのでした。

そこで神様達は、大そうおこられて、来日口に横たわっている大蛇にとびかかり、岸に引きずりあげて、これを真二つに引きちぎろうとなさいました。
大蛇は火のようにおこって、その太い長い体で、神様達をまこうといたします。神様達と大蛇は、しばらく上になり下になりしながら、地面をころがりまわりました。地面は、その度に、づしんづしんとゆれ動きました。神様達は死にものぐるいで戦われましたが、大蛇の一瞬のすきをみて「えい。」と一声、頭と尾の両方から引かれますと、もののみごとに大蛇の胴は真二つに引きちぎられました。
ところが、大蛇の頭はとび上って口から火をはき、神様の頭にかみつこうとし、尾は、はね上がって神様の体を巻こうといたしましたが、ついに力つきてそのまま動かなくなりました。
今までいっぱいあった泥水はすっかり流れ、泥海はりっぱな土地になりました。このようすにおどろいて、ほかの悪いけもの達も、みな逃げてしまいました。

その日が、ちょうど八月朔日〈ついたち〉であったので、この日を八朔〈はっさく〉といって、毎年、村からわらを集めて大蛇の形をした太い綱をつくり、村の者が頭と尾の二手に分れ、それを引きあってちぎることにしています。そしてそれの切れない年は、大水が出るといわれています。近年になってこの行事はすたれてしまいましたが、所によっては今も「えんたびき」といって行なわれているところがあるそうです。

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